月別アーカイブ: 2006年4月

イリオモテヤマネコの糞

Yamanekokuso イリオモテヤマネコの糞である。縄張りをしめすマーキングの為に、彼らは岩の上など見晴らしのいい場所で糞をし、砂で隠すというようなことはない。なので、探せば意外と簡単に糞は見つかる。

ヤマネコの糞はけっこう臭い。それは糞そのものの匂いと言うよりも、もっと獣臭い感じである。それもそのはず、彼らは肛門の横にある臭気腺から、臭い糞に臭いガスをかけ更に臭くしているのである。久しぶりに匂いを味わおうと鼻を近づけ、「げえええ」と思いっきりえづいた。気分が悪い。

さて、この糞よく観察してみると、ヤマネコが食べたものが分る。手前には細い骨の塊。奥の大きい糞にはうろこが覗いている。どうやら、この糞の在りし日の姿は天然記念物のキシノウエトカゲのようだ。特別天然記念物が天然記念物を食う。すごい島である。西表。

ツルアダン(ヤンダル)の花

Yandaru ツルアダン(ヤンダル)の咲く時期、アカショウビン(ゴッカル)が渡ってきてよく鳴くという。これが島の季節感。ウリズンの風物詩。

山を歩いていると、パイナップルカステラが少し焦げたような、そんな濃厚な甘い香りが広がることがある。そういう時、近くの木々の梢を見上げれば、このツルアダンの黄色い花が見上げられるだろう。

島ではこの花を食べるという。左の花、中に棍棒状の雌しべが見えるのが雌花。右が雄花である。棍棒状の雌しべは、この棍棒の表面一つ一つにもっと小さな子房があり、熟するとその一つ一つが密集した実の塊の棒となる。

さて、以前、この花を食べてみた。確かに最初は甘く感じるのだけれど、その後の苦さといったらない。天麩羅にまでしたのに、苦味が消えない。年寄りに聞けば、それは雄花を食ったからだという。反対に雌花が美味いというので機会を待っていた。そして、今日、雌花に出会えた。早速、雌しべの横にべろんと出た舌状の花弁(?)らしきものを口に入れる。柔らかく、甘い・・・が、やはり苦い!強烈な苦味。雌花も充分以上に苦いではないか。

これを美味いと言えるのはやはりゴーヤを愛することのできる沖縄人ならではだなあと妙に納得できたのである。

ベニボシカミキリついに撮影成功!

Sbeniboshikamikiri 西表島にやってくる虫屋さんが、GW前のこの時期狙っているのはこのカミキリムシ。わずかな期間しか成虫は現れず、また数も少ない。

僕が見つけたのは数年前。たったそれ一度きりで、しかもその時は、これがそれほど貴重なものとは知らなかった。

そして、今日の遭遇。オキナワウラジロガシの大きな倒木のそばにいるのがパッと目に入った。こんな色だから当然目立つのだが、学説によれば、この赤に黒は、亜熱帯の照葉樹林では保護色になるという。いい加減な話。よく目立つけど?捕食者には見えないのか・・・?

鮮やかな赤い体に黒い紋。触覚の第3節~5節には房状に毛が密集し、飾りを付けているよう。そして意外にスマート。彼は写真を撮り終わるのを待たず、慌しく逃げていった。

勿論、それでいい。今日は、これだけで幸せだったなあ。

雨上がりのカンムリワシ

Skanmuriwasihaneboshi 大雨の後、車で走っていると、低い枝にカンムリワシが留まっていた。両羽をやや広げ、濡れた体を乾かしているところのようだ。

ちょっとへんな格好である。写真を撮る為に車を近づけたが、彼は少しどうしようかと考えたものの、面倒くさいからそのままいることにしたようである。おかげで逆光ではあったがいい写真が撮れた。

よっぽど今日の雨は堪えたのだろう。確かに酷かった。至るところに幻の滝が出現していた。

僕のカメラでは逃げなかった彼であったが、急に飛び去った。見ると、後から若いお姉ちゃんが歩いて近づいてきていた。彼女も飛び立ったカンムリワシに気付き、残念そうだった。

ヤンバルセンニンソウ

Yanbarusenninsou キンポウゲ科のヤンバルセンニンソウが花開いていた。以前見つけて、ああここにあるなあと思っていた場所にいつのまにやら無くなってしまっていたことがある。道路脇の植物は、西表島の場合、道路管理の草刈などでも容易に姿を消していく。勿論、否定的な意味は何もない。

ただ、また次の花の機会を待ってしか探せなくなっただけである。

このセンニンソウ。仙人草と書く。なぜかと言うと、その種が非常に面白い形をしており、種の先に着いた毛が仙人のヒゲのようだからだとか。

しかし、その種も、今度見つけた場所が道路工事現場のすぐ脇だけに今後見れるかどうかは怪しい・・・・。

ギランイヌビワ(コニシイヌビワ)

Sp1010023_1 幹生果という。熱帯、亜熱帯の植物でこんなふうに実を幹から着ける種類は多い。特にクワ科イチヂク属で見られる。先にここでも書いたアコウなどもそう。実をこの地域独特の大型哺乳類、オオコウモリに食べさせる為に、こんなところに実を付けるのだ、と千石センセイに教えていただいたことがある。勿論、食べさせて、種を糞で運んでもらう為である。

さて、この写真の実。イチヂクだけにこれが花なんだか、実なんだかよく分らない。イチヂクは無花果。実を小さくしたようなのがぽっつり出来て、それが花で中におしべも雌しべもある。で、花の時期には先端(お尻)に小さな穴があって、ここから受粉を助ける虫が入る。それはこの場合、ギランイヌビワコバチ。一種のイチヂクには一種のコバチが共生関係を結んでいる。ガジュマルだったら、ガジュマルコバチ。

入るのはコバチのメスのみで、その体には花粉が着いている。それが花に侵入して子房(雌しべの根元)に産卵する際に雌しべと接触し、受粉する。勿論、産卵されなかった子房は成熟し種を作る。で、同じように産卵されたコバチの卵は幼虫になって産卵された子房を食べて実の中で成長する。この頃には、花の時代にあった虫の侵入経路はふさがっている。

そして、子房が熟して、いわゆる果実が食べ頃になる直前、実の中には羽化したコバチのオス、メスがワラワラといて、そこで交尾。オスはメスの為に果実を食い破り、脱出経路を開いてやる。この頃になって、果実の方は、初めてオシベに花粉を付ける。メスが脱出していく際、その体に花粉を着けさせる為だ。

そして、交尾を終え、花粉を着けたメスは別の花に潜り込む・・・

ああ、なんて複雑で、なんて素敵な営み・・・・

ソデガラッパ

Sgarappa 干潟を歩いていると、見かけるかわいい蟹。

はさみ足を前でそろえて、石のように丸くなる。その姿は清朝の礼服を着た人が胸の前で袖を合わせている姿のようだ。だから袖ガラッパなのか?

見て欲しいのは右のはさみ足に突き出た突起。この蟹は勿論肉食だが、特に貝を好むらしい。この突起を支点に鋏の歯を缶切のように利用して、貝を割るらしい。

凄いねえ。食べるということへの進化というのは。ちなみに僕はビール瓶の王冠ならば、歯で開けられる。

ギョクシンカ

Sgyokusinka_3 この時期には本当に花が多い。まあ、暑い夏が来れば、すぐに花も萎れてしまうので、今咲いておくのが賢明と言えば賢明。

しかし、西表の野生の花というのは白い花が多い。なぜだろう。森の中とかでは白が目立つのかなあ。

さて、アカネ科のギョクシンカ。山や海岸林内など、けっこう幅広く見かける。他の図鑑、HPなどでは山地の植物としてあるが、そうとは言い切れまい。ところで僕としては、以前自分のHPで玉心花か玉芯花か、などと字で悩んだが、今回改めてよく覗いて見て分った。玉芯花だと僕は思う。見よ、あの白い花の真ん中に突っ立った芯を!

ちょっとこの芯というか塔だけが異様。マッチ棒みたいな蕾が開いて、か細い花弁の中にそびえる「芯」。「心」じゃ意味が通らないなあ。

クロツグ(マーニ)の実は美味そうだが、やばい!

Kurotugu ヤシ科のクロツグ。島ではマーニと言って、幹の周りの毛を箒に利用したり、若くまだ広がっていない葉を使って玩具のヘビを編んだり、あるいは、幹の芯は食用にしたり、と利用は広い。

さて、この時期、森を歩いていると、赤いこの実の皮だけが落ちていたりする。中身はきれいに無く、皮だけ。おそらく食ったのはオオコウモリ。果実食だ。

で、オオコウモリが食べられるなら、と赤く熟した実を見つけて口にしたことがある。剥いてみれば、それはもう美味しそうな中身。プルンとしてフルーティーな感じだ。言うならライチの中身にも似ている。

味は、美味い。一口目の爽やかな甘さ。上品だ。うむ、食える。と噛んでいって飲み込んだ。が、その時からさあ大変。口の中に細かい棘が一万本も刺さったようなエグ味というか、痛みというか・・・・。あまりの辛さに唾を幾度も吐き出す。

しかし、治らない。お茶で口をすすいでも無駄。どうにも困る。結局2時間ほど、苦しみと付き合った。幸いなのは、お腹には来なかったことぐらい。二度と食べたくない果物だ。(これを果物といってよければ・・・)

シロオビホタルガの雌は綺麗

Sshiroobihotarugamesu 山道を歩いていて、きれいなヤツを見つけた。

形からマダラガの仲間とは分る。この種類は非常に模様も美しい。蛾と言うより、蝶の美しさ。さらにそれを上回っているかもしれない。

シロオビホタルガはオスよりメスが美しい。オスは羽の前半部が黒くそれに白い帯が入っているような模様。一方メスは白が基調になった爽やかな印象。

ホタルガの「ホタル」は頭のオレンジ色がホタルのそれに似ているからかな、と思っている。ホント、色々この種類は見てみたいと思わせる。