潮が引いた海岸で貝を探しながら歩いていたら、砂地に半分埋もれたフデガイを見つけた。
手ごろな大きさでとても綺麗な貝だ。これはチョウセンフデかな。
彼らは長~い象の鼻のような口を持っていてこれで砂の中にいるゴカイなどを探して食べるれっきとした肉食。デローンと垂れるその口は微妙に不細工だが、とにかく貝殻はいいので、持って帰ろうと思い、人差し指を入り口に掛けながら、持ち歩いていた。
そしてカヤックに戻り、貝殻を置いた時に、僕はどきっとした。
指が変な色をしている!
しかも不気味な光沢のある紫色っぽい褐色。見れば、貝の口から同じような色をした液体がわずかに垂れている。貝の分泌液に染められてしまったようだ。
しかもこの色が全く取れない。風呂入って擦っても取れない。
これって貝紫のようなもの?
貝紫とはアッキガイ科の貝の分泌液から化学反応で作られる染料。フデガイはアッキガイの仲間ではないかもしれないが、きっと似たようなもんだろう。
貴重な体験だ。この分泌液は貝が捕食者に対してとりえる最後の防御手段なのかもしれない。