月別アーカイブ: 2007年10月

イリオモテヒメラン(アーカイブ)

Iriomotehimeran_3 ツアーで人が歩く山道、その本当に人が足を置くような場所の脇に、小さなランがあるのには昔から気付いていた。あんまり近く過ぎて何度か踏まれたりもしていたが、この株はしぶとく生き残っていた。

人間による踏圧というのは酷いもので、以前、足を置きごろな岩の脇に生えていたおそらくはツルランの株がポッキリ折れていたり、楽しみにしていたカゴメランが踏まれて枯れてしまったり、などというのを見ていただけに、今回この株がついに花をつけたのは嬉しかった。しかし、これは踏圧というより、歩く人の不注意にも問題がある気がする。先頭を行くガイドさんには是非にも気を使っていただきたい部分だ。

イリオモテヒメランの名前どおり、もとはこの島で発見された小型のランである。が、現在は沖縄本島でも確認されている。大体種名に含まれる地域名は早い者勝ち。ここはイリオモテが勝っている。花は至極地味。軍配のような形の黄緑に紅の混ざった花が花穂に並んで着く。

この地味さゆえだろう。花は花穂の先っぽまで咲ききらぬうちに、また気付かぬ人に踏まれて駄目になってしまった。残念だったが、近くを探して同じイリオモテヒメランがしっかり花を咲かせ終わって結実しているのを見つけた。少しほっとした。

ヤエヤママルバネクワガタ(アーカイブ)

Marubanekuwagata 増水した影響からだろう。滝壺には普段なかった山からの流木が、いくつか浮かんだり沈んだりしていて、その一つは滝壺が再び川となって落ちる岩の隙間に引っかかっていた。

ふと見ると黒光りする大きな虫がいる。見てみると、これは珍しい。ヤエヤママルバネクワガタだ。オスで6cmぐらいはある。どうもこの流されてきた朽木の中を棲家としていたようだ。前日の大増水は彼らにとっては迷惑極まりなかっただろう。

マルバネクワガタは日本のクワガタの中では勿論希少な種類で、ネットオークションなどを見ると剥製すら高値で取引されているのが分かる。僕もわざわざオキナワウラジロガシの洞など見て歩かないだけに、見つけたのはこれが初めてだった。が、調べるとこのメスはクワガタ類では日本最大になるらしい。ではメスの方が見れたら貴重だったのか。

この個体、次の日もまたその次も同じ朽ちた流木につかまっているのが見られたが、やがていなくなっていた。ようやく家屋損壊というショックを乗り越え、メスを探しに出かける気力が戻ったのだろうか。

茶色屋根の下のキノボリトカゲ(アーカイブ)

Sp1010039 ずっとさぼりっぱなしだったので、胸に言葉が溢れている。そこで ブログ以前のいい写真もちょっと掲載することにする。名付けてアーカイブシリーズ。

僕は学生時代からキノコが好きだ。経済学部のくせに、キノコで論文らしきものまで書いたことがある。が、西表はなかなかキノコにはよくない。湿度が高すぎてすぐに腐るのと、虫による食害。そしてやはり全体に種類も量も少ない。さらにいわゆる秋の涼しさが生み出すキノコというのを見ない。島の人もきのこ狩りみたいなレジャーはなく、ごく限られた種類のものを採るだけだ。少し寂しい。キノコが見たい。そんな思いが胸を占める。

なので、10月のその日、山を歩いていた僕は、久しぶりに見つけた秋キノコに思わず目を留めた。イグチかな?そう思って手を伸ばしてやめた。すぐにこのキノコの主を見つけたからだ。それは小さなキノボリトカゲだった。彼女はそのキノコに集まる虫を狙っているらしい。確かに小さなキノコバエが辺りを飛んでいた。

う~む。かわいすぎる・・・・。僕は出来るだけ彼女を脅かさぬよう、地面に這いつくばって写真だけ撮らせてもらった。しかし、こうやって写真を見てみるとしっかりこっちに注意を向けているのが分かる。驚かしてすまない。

キノボリトカゲは爬虫類ながら、シロアリの蟻道を破壊して(あるいは何かの偶然で破壊されていたのか)そのトンネルを通過しようとするシロアリをぱくっぱくっと食べているのを見つけたこともあるし、今回のことにしてもなかなか頭がいい。頭のいい器量よしは、きっと森の人気者だろう。