増水した影響からだろう。滝壺には普段なかった山からの流木が、いくつか浮かんだり沈んだりしていて、その一つは滝壺が再び川となって落ちる岩の隙間に引っかかっていた。
ふと見ると黒光りする大きな虫がいる。見てみると、これは珍しい。ヤエヤママルバネクワガタだ。オスで6cmぐらいはある。どうもこの流されてきた朽木の中を棲家としていたようだ。前日の大増水は彼らにとっては迷惑極まりなかっただろう。
マルバネクワガタは日本のクワガタの中では勿論希少な種類で、ネットオークションなどを見ると剥製すら高値で取引されているのが分かる。僕もわざわざオキナワウラジロガシの洞など見て歩かないだけに、見つけたのはこれが初めてだった。が、調べるとこのメスはクワガタ類では日本最大になるらしい。ではメスの方が見れたら貴重だったのか。
この個体、次の日もまたその次も同じ朽ちた流木につかまっているのが見られたが、やがていなくなっていた。ようやく家屋損壊というショックを乗り越え、メスを探しに出かける気力が戻ったのだろうか。