カテゴリー別アーカイブ: 植物

ミズビワソウ

Mizubiwasou 暗いジャングルの沢のそば、本当に湿った岩場にミズビワソウの群落を見つけた。

別の場所では、2月ぐらいに花が咲いており、今年は花を写真に撮れなかったと残念に思っていたら、なんと6月に花が見れるとは。イワタバコ科の花で、以前紹介したヤマビワソウと葉の形などよく似ている。しかし、こちらはヤマビワソウより明らかに大きい。

ちょっと見、1メートルほどの小木のように直立した幹を持ち、質感も樹木っぽいが、触ればその幹は柔らかく茎であることが分る。つまり、この植物、草本である。

直立した茎のテッペンに葉が輪生し、その脇に花が着く。透明感のある、いかにも太陽のギラギラには弱そうなひ弱な感じの花だ。だが、僕はこのひんやりとした涼しげな顔が好きだ。

ウミショウブ花咲く海

Umisyoubuhana1 6月最初の大潮である。西表の海は奥はさんご礁に囲まれているが、陸に近い内側や川の河口は砂や泥が堆積した藻場となっている。特にウミショウブなどの海草が生えるアマモ場(ウミショウブ場でもいいかな)は特に重要な役目がある。

まず、河口からの泥土をここで受け止め、根元に堆積させる。これにより、大雨の後などでも、陸からの濁った水は海に向かって行くに従って浄化され澄んでいく。

また、小さな魚達に格好の隠れ場となると同時にその餌場ともなって、生態系の底辺を支えている。

さて、このウミショウブ。海草であるから、モズクなど他の海藻と一緒にされては困る。海藻が胞子などで増えるのと違い、こちらは花もつければ種子も作る。勿論、花があるのだから受粉もされなければならない。雄花が作る花粉を雌花の雌しべへと送る作業は、やはり水の中では難しい。その為、ウミショウブは大潮でもっとも潮がひいた時間にぽっこり海面に花を咲かせる。雄花から溢れ出た沢山の花粉を乗せた小さな白いカプセルは潮のひいた海面を滑り、雌花へ辿り着く。そして受粉する。

当然、辿り着く確率は低い。風任せ、波任せである。なので、本当に沢山のカプセルが海へと放たれる。そしてごく一部が受粉に成功する。やはり、オスは競争なのだ。

ひとしきりの饗宴の終わった後、辿り着けなかったカプセルたちは波間に漂い、やるせなく汚れ、消えていくのだった。

サガリバナの蕾が沢山

Sagaribanatubomi1 さて、梅雨ももうすぐ明ける。

6月下旬の風物詩と言えば、サガリバナの花である。いずれここにもその姿は載せるが、今年も花は多そうだ。

まだまだ小さいものの本当に沢山の蕾がぶら下がった。早いものではもう咲いているものもある。最盛期は6月下旬より7月中旬。

しかし、気になるのは写真の蕾。わずか水面20センチほどのところに着いている。まだまだ蕾も成長し、長く下に伸びていくはずだが、これでは大潮の時には満潮時に水中に入ってしまう。

大潮は朝が満潮なので、咲いているところにどんどん水が迫るのだろう。水中花となるのだろうか。

マルバチシャノキの実を食す

Marubatisya 以前、ここで扱ったマルバチシャノキ(ケイズ)の花が何時の間にやら実に変わっていた。黄色く熟しており、花の大きさの割には大きく感じる果実である。

さて、この実を食べてみなくてはならない訳だ。一体どんな味なのか。早速よく熟していそうな1個を取ってみた。まず、指で潰す。柔らかい。中はねっとりとした果肉が詰まっている。

口にしてみた。

うん、美味い。ただし、いわゆる果実のような甘味も酸味もない。あるのはほのかな塩味と感じる香ばしさ。柔らかなナッツという感じである。これは酒が飲める。

これを喜んで食べた子供というのはけっこう通だなあ。

グンバイヒルガオ

Gunbaihirugao 浜にグンバイヒルガオがしっかり根をはり、広がって花を咲かせていた。名前の通り、葉が軍配に似ている。紫がかったピンク色の花を咲かせるのだが、こちらはアサガオもヒルガオ同様昼間も咲いているので、グンバイアサガオでもいいのではとも思う。強い太陽光線にも萎れない優れものだ。

しかし、まだ今年は台風が来ていないのでいいが、台風が一度来てしまうと彼らは可愛そうなことになる。砂地ゆえに根は浅くてしっかり固定はされていない。しかも身を守るもののない環境。強い風にカーペットごとめくりあげられひっくり返されてしまう。

今年はデイゴが全く咲かず、台風が来ない年になるのでは・・・などとも言われているが、そうなると彼らはきっとどこまでも繁茂して広がっていくのだろうな。

イジュの花開く

Iju1 ツバキ科のイジュ。大ぶりな花を葉が集まった枝先の更にその上に沢山つける。したがって椿などよりも花は良く目立つ。しかも、かなりの高さになる木だ。車を運転中でもよく目に付き、とても存在感のある植物だ。

特に入梅したこの時期、イジュは見事にあちこちで咲き誇り、この季節を象徴する花となる。去年、娘が生まれた時、石垣の野山で咲いていたのもこの花だった。

だからか知らない。僕はそれだけでこの花を愛しく思って優しく見つめてしまう。娘と同じように。

サクララン

Sakurarann21 樹上からぶらさがる蔓。そして分厚く鈍い光沢のある作り物のような葉。その途中にぶら下がる可愛らしい花の塊。こちらなどは更に作り物のようだ。

これがサクララン。ホヤなどとも言うが、ホヤでは魚介に間違うのでサクラランの名前が可愛くていい。桜の花のように幾輪が集まって咲く様子、その花の色、やはりサクラランがいい。

が、残念ながら実際は蘭ではない。ガガイモ科というキョウチクトウ科にわりに近いところに位置する仲間だ。そう言えば、同じ蔓植物でキョウチクトウ科のテイカカズラなどの果実とそっくりの果実をつける。細長い莢状で、熟するとそれが割れて中から綿毛のついた種が飛ぶのだ。

タカサゴシラタマ

Takasogosiratama1 渓流沿いのわりに背の高い何気ない木が、この時期、あっと思う変化をする。その枝中にピンク色の可愛らしい花を沢山つけるのだ。

以前からよく道に落ちているこの花は見かけていた。なんだか、花らしくない作り物のような質感。でも本当に可愛い。しかし、名前が今年になるまで分らなかった。だが、ようやく図鑑で調べることができた。

載っていたのは唯一平凡社の「日本の野生植物」のみ。図鑑というのは一つでは足らないものだなあ。この植物、石垣と西表にしか国内では生えていないマタタビ科の植物。この後、名前の通り可愛らしい白い液果が鈴なりとなる。楽しみだ。

モクタチバナ

Mokutachibana1 モクタチバナがよく咲いている。ヤブコウジ科の花で合弁花。川沿いでフワフワと白い花の塊が目立つ。

それだけ花が小さく沢山つくということだが、あまり、気にされるものでもない。だが、よくよく見れば、反り返った花弁の中におしべが偉そうに反り立って自己主張している姿がなかなかいい。

まあ、切花にはならないなあ。

因みに西表の山の悪者の一つ、ヤマンギ(イワサキカレハの幼虫)という毒のある毛虫はこの木を好んでよくひっついている。

ツルアダン(ヤンダル)の花

Yandaru ツルアダン(ヤンダル)の咲く時期、アカショウビン(ゴッカル)が渡ってきてよく鳴くという。これが島の季節感。ウリズンの風物詩。

山を歩いていると、パイナップルカステラが少し焦げたような、そんな濃厚な甘い香りが広がることがある。そういう時、近くの木々の梢を見上げれば、このツルアダンの黄色い花が見上げられるだろう。

島ではこの花を食べるという。左の花、中に棍棒状の雌しべが見えるのが雌花。右が雄花である。棍棒状の雌しべは、この棍棒の表面一つ一つにもっと小さな子房があり、熟するとその一つ一つが密集した実の塊の棒となる。

さて、以前、この花を食べてみた。確かに最初は甘く感じるのだけれど、その後の苦さといったらない。天麩羅にまでしたのに、苦味が消えない。年寄りに聞けば、それは雄花を食ったからだという。反対に雌花が美味いというので機会を待っていた。そして、今日、雌花に出会えた。早速、雌しべの横にべろんと出た舌状の花弁(?)らしきものを口に入れる。柔らかく、甘い・・・が、やはり苦い!強烈な苦味。雌花も充分以上に苦いではないか。

これを美味いと言えるのはやはりゴーヤを愛することのできる沖縄人ならではだなあと妙に納得できたのである。