3月11日。
今となっては忘れられない日になってしまいました。
お客さんは昨日のHご夫妻の旦那さんとたまたま同じ宿の男性、Oさん。Oさんは初カヤックなので、僕とOさんで2人乗り。Hさんはけっこう漕げる方だったので、今日はシングル艇を貸してあげることに。
思いのほか東風が強いので、予定のフカパナリ島コースは、ルートを変更して祖納からではなく、白浜から出発することになりました。
往路、風は追い風。
僕らはウィンドパドルを上げてグングン飛ばします。
一方のHさん、漕ぐことが楽しいのか、風は使わずに自力で漕ぎ続けています。
僕がシングル艇を貸してあげられると見込んだだけはあります。さすがです。
ウチパナリ島を周りこんで、フカパナリ島へ到着。
久しぶりにオジイの顔を見にいきました。寒い季節なのでさすがに裸ではありませんでしたが、病気も無く元気そうです。前回、買出しに来た時にうちの妻があげた日本酒(英勲)を、「いやあ、美味かったなあ!」と喜んでくれていました。今年の春は寒いので、酒があれば少し凌げます。よかった。
変わったことと言えば、台風避けの小屋(!!)が出来ていたこと。
オジイ一人が入れるぐらいの本当に小さな小屋ですが、まだまだ未完成らしく、たしかにこの小屋では台風でそのまま飛んで行ってしまいます。かえって危ない。
屋根と壁との隙間を蓋して、入り口には扉を付け、柱を地面に埋めて・・・・とこの後も色々大変です。
さて、オジイの浜を後にし、風裏のビーチへ移動。ここで休憩にしました。
まずは竿を2本セッティング。
ビーチからの投げ釣りでお二人には楽しんでもらいます。
と言っても、お二人、
「こんなんで本当に釣れるの・・・・?」
ちょっと半信半疑ですが・・・
ちゃんと釣れました。良型のクサムルー。
この時期には美味い魚です。
Hさんの宿は自炊設備のある素泊まりなので、この魚は奥さんへのお土産となりました。
お二人が釣りしている間に出来上がったのが、グッドアウトドア特製「キャベ丼」。
旬のアーサ汁
を添えます。
たっぷりアーサ。贅沢です。
さてさて、釣りにも満足したところで帰ることに。
帰りはきつい向かい風を避け、できるだけ風裏を通り、無事白浜へ到着しました。
しかし、港に入った途端に、集落のスピーカーから防災無線の放送が大音量で流れました。
東北地方で起こった大地震による津波注意報が発令されたので、沿岸にいる人は注意してください。という内容です。あわててカヌーを片付けていると今度は「警報」が発令されました。
白浜の人が港に飛んで来て、「警報だから港の水門を閉めるよ!急いで!」と僕らに注意しました。
白浜地区は標高が低く、高潮などでも海水が集落内に浸入することがあるのです。
津波に対する警戒心は西表一でしょう。
僕らはすぐに白浜を離れ、お二人の宿に向かいました。
その後は、あまりにも無残な状況がTVに映し出されるのを、その民宿でただ呆然と眺めていました。
うちの家にはTVがない為、家ではラジオを点けっ放しにして情報に注意していましたが、夕方、津波の高さ予測が最大50cmから1mに変更されたのを受けて、「全員高台に避難するように」と消防団からの勧告が入りました。
急遽おじいもおばあもみんな高台のアパートの駐車場に設営されたテントに避難です。ちょうど夕食の準備をしている時で、みんな腹を空かしたまま。子供らが可哀想です。いつ解除されるか、いつ帰っていいかも分からないまま、風の中、町からの連絡を待ちました。
その間もテントではTV放送が流されています。
みんな顔を顰めながらその様子を見守っていました。
公民館から炊き出しが行われ、皆が家に戻ったのは10時ぐらいだったでしょうか。
幸い、祖納地区にはなんの被害もなく、逆に本当の危機の場合の問題点などが、見つけられました。
僕自身、あまり危機感を持っておらず、ほんの少しの間の避難で済むに違いない、と手ぶらで出てきたことを後悔しました。
せっかく防災セットを準備してあったにもかかわらず。
後日、Hさんからお写真、いただきました。
Hさんも夕飯時に僕ら同様、避難させられていたのですが、避難指示が出されたまさにその時、箸をつけようとしていたクサムルーのお刺身と前日の水落ツアーで採ったイソハマグリとユシ豆腐のお汁。
美味そうですね~。