スポットライト
2008/07/13
ナーラ、サガリバナ10時間
サガリ花の大群を過ぎた更に上流、
もう花は数えるぐらいしか、水面にはない。
代わりに、大きな森の木々が梢を川の中ほどに伸ばし、
静かな木陰を作っている。
島の朝の太陽は思わぬほどに強くまばゆい。
まだ起ききらない体には。
だからそこはもう既に大事な憩いの場。
強い光を避けて、か弱い人間たちが逃げ込んでくる。
そんな梢の隙間から一筋の光が水面に落ちる。
木漏れ日よりもはるかに強い。
目的を持った白く太い光の束。
丸く水面をくりぬいて、それがくっきり照らし出すのは、
たった一輪。
落ちたサガリバナ。
鮮やかな紅色、愛らしい薄桃色、数々散らばる水面の花々。
その中では、単なる地味な引き立て役。
その他大勢の白い花。
だけど、光の中ではちょっと特別だった。
誰よりも輝いた。
君がスポットライトの中心。
最後に主役の思い出を。
選ばれた多くの花のうちのたった一つ。
僕はちゃんと見ていたよ。