今、山の向こうで、朝の光が空を明るく変え始めた。 夜はすうっと溶けてしまい、僕らの足元へ落ちてきた。 山々に挟まれたこの川面まで、まだその光は届かない。 そこここで燻ぶる夜の欠片たち。 水を掻くパドルに蹴散らされ、舟に踏み潰されて、 やがて夜は切なく消え去っていく。 声を出すこともなく。嘆くこともなく。
凛とした夜がまた恋しくなる時もある。