新盛家住宅について補足。
11月27日の記事でこの建物が最低築140年を超える、あるいは300年を超えるかもしれない建造物であるということは記した。
また沖縄県指定有形文化財であり、県内の家屋では、わずか3軒だけがこの指定を受けており、残り2軒は赤瓦。
新盛家が文化財の中では唯一の茅葺き家屋となる。
そしてここが大事なのだが、新盛家住宅がたとえ、140年前の築であったとしても、それでも県内最古の木造住宅であるということ。高温多湿な沖縄の環境で、木造住宅が長持ちしないのは、我家を改装した際に見たシロアリ被害での十分に想像できる。
が、この家屋は未だ新しい。そこには今では失われた技が詰まっている。
2日目が始まった。
今日は人手が足りないだろうということで、先にどんどんカヤを運び込んでおく。
幸いにして雨はなく、風も大人しい。昨日よりはるかにいい天気だ。
昨晩の養生のブルーシートを外すと、一晩ブルーシートで抑えられた屋根のカヤは良い具合に整っていた。
今日は、人手が少ないが、その分各自の役割がはっきりしていていい。
動かないでいる人はいない。屋根を葺く組は二組しかないのだから、ジーマーリャーばかり多くてもしょうがない。
昨日はちょっと多すぎた。今日は僕は足場の上で下からカヤを受け取り、屋根の上にそのカヤを投げる役目。
屋根の上でカヤを葺く人と、締める人の動きを並べてみた。
ⅰ ネガヤ(上向きのカヤ)を敷き詰め・・・
①締める人間は葺かれたカヤの上にキブクを置き、「イデョーリ」の掛け声を出す。
オジイの話ではこの掛け声にもゆったりしたリズム、下の人間に対する優しさが必要だとか。
②それを聞いた屋根下の人間が、ここぞという場所に「針」を刺して、外まで貫通させる。
もし、あまりよくない場所に出た場合、「モトイ!」と声をかけ、やり直させる。
⑥上は待ち時間。
下は垂木をはさんで反対側の野地竹の隙間から針を刺す。
⑦紐の通ったままの針が上まで再び貫通して出てくる。
この時、注意しなければ、顔や目を刺されかねない。余所見はできない。
⑧すばやく針の穴から紐を引き抜き、「トウ!」の掛け声。
下の人間は針を引き抜く。
そしてとなりの垂木へと移動。刺すべき場所を決めて次の「イデョーリ!」の合図を待つ。
⑫小さな棒切れを使って、しっかり締める。
これで完成。必要な部分で紐を切りながら、次の「イデョーリ!」の合図を出す。
今度はチヌファ(角周り)の作り方を連写してみた。
①チヌと呼ばれる棟の部分に他よりも一段高く盛り上がるようにカヤを積む。
③「キーブク!」
下にいるジーマーリャにキブクを上げろと言っている。
ここは角なので、弾力性があるアブチャンが好まれる。
④キーブクの根元をカヤの下、垂木や竹の間に差し込み固定する。
この為に、キーブクの先端は削って尖らせてある。
⑧膝で抑えながら、キブクの先端側が入る場所を確認、位置調整。
⑨差し込みやすいようにキブクの先端側を削る。
だいぶ進んできた。
今日でなんとか終わるかなぁ・・・。
右側の電柱の上で変な格好をしているのが横塚カメラマン。
ちょっとだけ休憩。
休憩も屋根の上。野地竹だけの時よりはカヤによる厚みがあるので、休みやすい。
一旦はしごを使って上に上がったら、今度はなかなか下りることが許されない。
できるだけ葺き終わった屋根に負担をかけないようにする為だ。
はしご無しでどうしても昇り降りしなければならない場合はチヌ(角)からと言われている。
あと、もう少しというところまで来ているのだが、屋根の幅も狭くなり、二組、お互いにどうしても動作が干渉してしまう。ここからなかなか作業が進まない。
下から竹竿を屋根の上まで貫く「針」役の人は、天井裏に仰向けに寝転がっての大変な作業だ。
同時に体重の軽い人が屋根のカヤが薄い場所などにカヤ束を挿したりして補修。
ついに投光機に灯りが点った。
曇り空なので分かりにくいがいつの間にか日没だ。
あと少し。最後まで進めたいが、暗いと危険が多くなる為、今日はここまで。
さあ、明日は夕方からヤタカビのお祝い。
当然、午前中。できればもっと早い時間に仕上げなければならない。
いよいよだ。