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清め

清め

2008/08/16

祖納集落内

3日間続いたお盆行事。昨晩から夜中にかけて、祖納では各家々で祖霊をグソー(あの世)に送り返した。
僕も忙しすぎて、自分の祖父の魂と向かい合える時間がなかなか取れなかったが、夜中に帰ってきてから、そっと線香を供えた。無事、あの世に帰れたことと思う。

さて、一夜明け、今日はソールムラングトゥ(お盆作業)の日。今日と言う日は、人々が海や山へ出かけることを強く戒められている日である。
と言うのも、お盆には弔ってくれる子孫が続く魂ばかりではなく無縁仏や悪い魂もこの世に帰ってきているのだが、送りの日に送ってもらえなかったそれら魂が、人をあの世へと引っ張るのらしいのだ。それでこの日だけは遠い場所へは行くなということである。

島では、それを男たちに守らせる為にこの日は公民館作業が行われる。作業と言っても部落内の草刈が主だが、こうした草葉の影に隠れた帰らない魂を追い出す意味もあるのかもしれない。
また、これに出席することを求めて、勝手に遊びに出させないことで、つまりは集落民の安全を図ろうというのが主目的である。

さて、作業、実は僕は寝坊してしまった。大変な失敗である。
この作業の為にわざわざツアーを休みにしていたのに、休みと思ったら、僕も妻も気が抜けてしまったようだ。
あわてて駆けつけるが、見れば青年は今年も非常に少ない。昨晩までのお盆行事の疲れもあるのだろうが、勤め人には、休みが取れない人もいる。毎年、そんな感じだ。
先輩たちもあえて苦言は呈さない。出来る人間が出来ることをやればいい、そんな大らかさがこの村にはある。

さて、作業も終了した午後、島を象徴する大事なシンボル、旗頭を出しての清めが始まる。
ドラや太鼓を鳴らしながら、旗頭を担いで辻辻を廻る。そうして居残ってしまった帰れない魂たちを強制退去させる行事だ。
こういう場合に用いられるのは2番旗。タイコガシラと呼ばれる鮮やかな色合いの旗頭だ。
この頭がかなり重たい。
担げば肩に食い込む。感覚もなくなる。
が、僕が最初に担いだ5年前、先輩に言われた言葉は、「重いだろう。これが島を持つ重さだぞ。よく覚えておけよ」
そんな意味深な言葉だった。
今でも僕にはその言葉は重過ぎるのだが、少なくとも毎年率先して旗頭は持つようにしている。