ヤータカビ

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午前11時にカヤ葺き替えが完成したその午後、今度は家の周りの掃除、および、落成祝い、ヤータカビの準備である。落ちたカヤやくずを拾い、連日の雨中の作業でぬかるんで沼と化した家周りに、砂を敷き詰める。
そして家の中を掃き清め、久しぶりに座敷に畳が入れられた。
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家の周りにも2張りのテントを立て、テーブル椅子が並べられる。
家の中では中柱(大黒柱)の下にすでにお供えが準備されているが、外はまだまだ。
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一生懸命働くが、お祝いの集合は夕方5時半だというのに、5時を過ぎてまだ整わない。
5時半を回り、ようやく着替えた人間が集まってきたので、後はその人たちに任せて僕も着替えに戻った。
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今日は出来るだけ着物で集まってほしいとのことだったので、僕も妻に着物を出しておくようにお願いしたのだが、急いで帰宅する道道すれ違った近所のおばあたちもやっぱり着物だった。
いつも野良着なので、こういう姿はなかなかに新鮮だ。
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いつもは末席に座るのだが、今日は棟梁やその他先輩方から上に上がるように言われたので、ありがたくそのお言葉に甘え、座敷に上がらせていただいた。村の先輩方はほとんどみんな着物姿だ。
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ようやく行事が始まった。
まずは、中柱にニンガイ。
僕の前には神司さまと先代のチカアッパァが座っている。
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中柱に供えた酒、マース(塩)などが、今回の作業の棟梁格に下ろされる。

そして、ドラの音とともに西表の「ヤーカタビ(家祟び)」が始まった。
家を作るということは一生にほとんど一度しかない人生の大行事。
その嬉しい気持ちを皆で祝福し、神に祈る為の古謡である。

内容は、「本当によい日を選び、島の懐から素晴らしい柱を切り出し、この神に守られた大里の真ん中に、大きな家を新築しましたよ。神様も親人も大工も『結い』に参加してくれた人々も皆祝ってください」といったもの。

今回は若い世代にもこの美しい古謡を知ってもらおうとの公民館長の気持ちから、先に2度ほど、「ヤータカビ」の練習会が行われた。そのおかげで初めての僕も、歌詞まではおぼつかないが、メロディーや繰り返しの部分は分かっていて心から楽しめた。
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ちなみにヤタカビは15番まで歌詞があり、最初に親が歌ったのと同じ歌詞を子が繰り返して歌い、次に二番に進む。そんなふうに繰り返しなので、実はなんとなく知っているだけでも歌いやすいのだ。

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お神酒を持った女性が酒を茶碗を片手に踊りながら、唄う村人の口に注いで歩く。

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15番まで歌い終わるとみんなドラでガーる。(ガーリー=幸せを招きよせるように手のひらを反して踊ること)

続いて、次の「ヤータカビ」の歌。同じく親と子が繰り返して15番まで。

こちらの内容は実に茅葺きの家を作る、その材料と順序を歌ったもの。半分は屋根に関することなので、今回勉強した「言葉」がいくつも出てくる。
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そして、最後が神司さまがいらっしゃらなければ、歌えない歌。「アパレ」

アパレの最後も見事にしまる!

いやあ、よかった~。
ホントこの作業に一生懸命従事してよかった~。
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アパレまで歌い終わり、祝宴が始まった。
「折」とビールは施工主の屋建設から160人前。
そしてカマイ(リュウキュウイノシシ)を獲る先輩方からカマイの刺身とカマイ汁。
すごいご馳走である。

ちなみにこれが中柱へのお供え。
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奥からお米、マース、ウサイ。お神酒(グシ)は座敷に座る皆に下ろされ廻っている。

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棟梁であった長老のオジイの挨拶。現場では祖納人らしい猛々しさで、時には後輩達を猛烈に叱咤した。

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余興として祖納岳節。
今回は特別に祖納岳を向いて踊られた。

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控える島の青年。
いい顔だ。
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西表口説(クドゥキ)は中柱を正面に。

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続いて控えるのは、島の若い婦人。
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まるま盆山を正面に「まるま盆山節」。
僕の長女フクセが先日一生懸命稽古した島の芸能の代表格。
しかし、本当に白鷺が舞っている。
さすが。

賑やかな宴は10時には一次会が終わった。
しかし、それでも祝いきれない人たちは、さっと外回りの片付けを済ました後、座敷に座を作り直して宴を続けた。
深々と下りている島の夜の帳の中、数年ぶりに明々とした灯のともった県内最古のお家では、夜が明けてもなお賑やかな嬌声が絶えなかった。
新盛家のこの屋敷もきっと久方ぶりに快く歌に酒に酔ったことだろう。

ヤータカビ」への3件のフィードバック

  1. shiozawa

    新盛家茅葺きの様子、大変興味深く拝読させて頂きました。ありがとうございました。
    私は関西で茅葺き専門の職人をしておりますが、茅葺きの魅力は身近な草が屋根となり古くなれば肥料として土に還ること、そして繰り返されるその営みに誰もが参加できることだと思っており、葺き替えは専門業者だけで行うのではなく、市民参加の茅葺き体験、茅刈り体験を出来る限り開催するように努めております。
    新盛家葺き替えを通じて地域の暮らしの知恵が伝えられ、人の輪が広がってゆく様は、正に理想とする茅葺きの在り方を示して頂き、感動いたしました。
    また、ブログの内容も作業の要点を踏まえた解説と判り易い写真で、八重山ならではのチガヤの逆葺き屋根について大変勉強させて頂きました。
    ぜひともこちらのブログを、Twitterや拙ブログでもご紹介させて頂けないでしょうか。宜しくご検討下さい。

    返信
  2. goodoutdoor

    shiozawaさま、
    とても丁寧な感想、ありがとうございました。
    茅葺き作業、たくさんの人が色々な場面でできることをやる。そんな数日間で、本当に面白かったです。
    新盛家を紹介していただけるようなら、島の誇りにもなります。こちらこそmぜひ、よろしくお願い致します。

    返信

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